鳴き声が「めぇ〜」だったり、同じ漢字を使っていたり、とても似ている生き物のように感じがちですが、実は山羊と羊は全く違う動物です。
山羊は「鯨偶蹄目ウシ科ヤギ亜科ヤギ属」、羊は「鯨偶蹄目ウシ科ヤギ亜科ヒツジ属」と分類されており、山羊の染色体の数は「60」に対して、羊は「54」。
見た目の違いがあるという事には関係なく、生物分類学上で違う生き物なのです。
山羊の顔は三角錐。
羊の顔は円筒形。
全然違う形をした顔ですが、瞳の形はどちらも四角です。
また、山羊にはあごひげがあり、喉のところに垂れた肉(肉垂:にくぜん)がありますが、羊にはあごひげも肉垂もありません。
更に、山羊の角は婉曲をしながら後方に伸びているのが特徴ですが、羊の角は螺旋状の渦を巻いた形をしているのが特徴です。
シュッとスリムなのが山羊、もこもこしているのが羊なんて思いがちですが、実は大きな違いは尻尾にあります。山羊の尻尾は生まれた時から短いものですが、羊の尻尾は生まれた時には長いのです。
私たちが日常的に知っている羊の尻尾が短いように感じるのは、家畜の羊の尻尾は生まれてすぐ切ってしまうからなのです。
一方で、山羊も羊も「鯨偶蹄目ウシ科」に分類されており、蹄はどちらも2つに分かれています。
前述の通り山羊も羊も「鯨偶蹄目ウシ科」の生き物です。
そのため身体の仕組みは牛と同じで、胃袋が4つあり反芻します。
山羊も羊もいつでももぐもぐ口を動かしている生き物なのです。
山羊は読んで字のごとく山岳地帯など、高所で険しい地形を好みます。
垂直に近いような断崖絶壁でもぴょんぴょん身軽に移動することができる生き物です。
一方、羊は見通しの良い開けた平らな地形を好みます。平坦な草原が好きな生き物なのです。
山羊は好奇心旺盛でリーダー気質、活発な生き物ですが、羊は臆病で従順、群れを作るのが好きで、群れから離れることを嫌い、群れのリーダーに従う性質が強い生き物です。
この性質を利用して、スペインや中央アジア、モンゴルなどの地域では羊の群れに山羊を1頭入れリーダーになってもらい、放牧を行っています。
山羊は草があまり生えない様な高い場所でも暮らしていますので、草の他にも木の葉や木の芽、木の根なども食べています。
一方、平坦な草地が好きな羊は、草を好んで食べています。
なんとなく山羊はゴワゴワしていて羊はフワフワなイメージがありますが、実は山羊と羊では毛の手触りに大きな違いがあります。
山羊の毛で作った代表的な毛糸はモヘヤです。
キューティクルが繊維に対して限りなく平らで、角もなく滑らかで、ちくちくしないのが特徴です。
一方、羊の毛で作った代表的な毛糸はウールです。キューティクルが高く浮き上がり、角が鋭角で、ちくちくするのが特徴です。
日本ではそこまでメジャーではない山羊も羊も、世界では一般的に食べられているお肉です。
山羊肉には強い臭いがあり、山羊肉料理の際には臭い消しとして香辛料を使うことが一般的です。
日本では主に南西諸島や沖縄で食べられており、山羊汁や山羊刺しとして親しまれています。
また、山羊の睾丸の刺身は特に珍重されていて沖縄や奄美群島、トカラ列島ではご馳走とされています。
一方、羊肉は山羊肉ほどではありませんがやはり臭いが強く、北海道のジンギスカンやラムしゃぶが有名です。
海外では広く食されていてオーストラリアやニュージーランドをはじめ、豚肉を禁忌とするイスラム教が広まった国では消費が多くなっています。
シンガポールやインド辺りは、レストランなどでマトン料理を注文するとヤギ肉が出てくるのがメジャーだとか?
世界では山羊肉と羊肉を区別していない地域もあるのです。
本来違う種の山羊と羊ですが、ごく稀に自然交配され、ハイブリッドが生まれることがあります。
雑種は山羊の「goat」と羊の「sheep」を合わせて、「geep(ギープ)」と呼ばれています。